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AIエージェントの要件定義で失敗する原因と改善策

AIエージェントの要件定義が止まったら、機能を足す前に、対象範囲、判断主体、承認条件、所有者、例外の戻し先のどこが未決かを切り分けます。全件承認や全社一斉をいったん外し、影響の大きい操作から必要な決定だけを記録し直せば、会議と確認作業を再開できます。

全社一斉で絡まったAIエージェントの要件を、対象業務と人の判断点に分けて決め直す流れ

AIエージェントの要件定義が止まったら、機能を足す前に、対象範囲、判断主体、承認条件、所有者、例外の戻し先のどこが未決かを切り分けます。全件承認や全社一斉をいったん外し、影響の大きい操作から必要な決定だけを記録し直せば、会議と確認作業を再開できます。

AIエージェントの要件定義で失敗したら「決める作業」の詰まりから切り分ける

要件定義の立て直しでは、見えている症状から決め方の誤りを複数想定し、最初に戻す決定を絞ります。

本記事で扱う失敗原因は、公的な分類でも発生頻度順でもありません。AIエージェントの要件を決める会議や確認作業が止まったときに、原因候補を探すための編集上の整理です。同じ症状でも複数の原因があり得るため、「承認が遅いから承認者だけが悪い」のように一対一で断定しないことが重要です。

まず確認するのは、外部送信、更新、確定、削除など、影響が大きい操作を未決のまま進めていないかです。止める条件や判断者が決まっていない場合は、その操作を対象外にするか、人の判断を待つ状態へ戻します。そのうえで、会議資料、未決事項、承認記録、変更履歴から詰まりを探します。

見える症状 疑う決め方の誤り 起こる帰結 最初に戻す決定
承認依頼が滞留し、中身を見ずに処理される 操作の影響を分けず、すべてを承認対象にした 人の判断が形式だけになり、重要な操作へ注意を割けない 人の判断を置く条件
権限や参照データの話で会議が止まる 自社の決定と提供元への確認を混同した 回答できる人がいない論点を社内だけで抱える 自社決定事項と質問事項の区分
部署をまたぐたびに要件が増える 全社・複数業務を一度に対象にした 開始条件、操作、例外、影響が混ざる 一つの対象業務と対象外
変更や停止を誰も決められない 作成者・所有者を決めなかった 決定記録が更新されず、未決のまま進む 所有者と判断を引き受ける人
入力不足や承認拒否の後も処理方針が定まらない 例外時の戻し先を決めなかった 保留、再確認、終了の区別がつかない 例外条件と戻し先

この表は診断の入口です。たとえば承認の滞留は、対象範囲が広すぎる場合にも、提供元の仕様が分からない場合にも起こります。症状の行を選んだら、隣の原因を確定事項ではなく仮説として扱い、決定記録で裏づけてください。

失敗:すべてを承認対象にして承認が形骸化した

承認が形骸化した場合は、全件承認を続けるのではなく、重大な影響が生じ得る条件を特定して承認境界を分け直します。

総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン第1.2版」(2026年8月1日確認)は、非拘束的なソフトローであり、法令上の義務や要件定義の標準工程ではありません。同ガイドラインの別添5(AI利用者向け)は、人間の判断を介在させる条件を、出力によって重大な影響または被害が生じ得る場合とし、その場合に適宜判断するとしています。すべての出力を一律に承認するよう求めた記述ではありません。

一方で、何も承認しないと決める根拠にもなりません。別添1は、AIエージェントが自律的な動作の中で、人間の意図しない商品の注文やファイル削除等の動作を行う可能性があるとしています。だからこそ、操作名と影響を具体化し、人の判断を置く条件を自社で決める必要があります。

操作の具体例 影響の見方 人の判断を置く条件 条件が未決の場合の扱い
社内向けの下書きを作成する 公開前に修正でき、影響が限定されるか 内容によって重大な影響が生じ得るとき 下書きのまま確定させない
社外へ情報を送信する 送信後に回収できるか、相手へ影響するか 重要情報や確定情報を含むとき 送信を保留する
業務データを更新・確定する 後続処理や取引へ波及するか 取り消しが難しい、または影響範囲が大きいとき 更新・確定を許可しない
ファイルや記録を削除する 復元できるか、業務継続へ影響するか 復元不能または重要記録を対象にするとき 削除を対象外にする

これは公的な一律区分ではなく、自社判断を助ける整理です。「どの操作か」「どの条件なら重大な影響が生じ得るか」「誰が判断するか」を一組で残します。承認者が不在、拒否、または判断保留となったときに次へ進まないことも、同じ承認条件の中で決め直します。

失敗:自社で決めることと提供元へ確認することを混同した

会議が権限やデータ仕様で止まったら、自社が決める業務上の条件と、AI提供者・AI開発者へ確認する仕様を別の未決事項に分けます。

自社が決めるのは、対象業務、許す操作、重大な影響が生じ得る条件、例外時の戻し先です。これに対して、権限や参照データをどこまで制御できるかは、利用するサービスや開発内容によって異なります。社内会議だけで仕様を推測すると、誰も確定できない論点が残り続けます。

AI事業者ガイドライン第1.2版では、別添4の「ユーザーやシステムに付与する権限を業務遂行に必要な最小限に設定する」はAI提供者向けです。また、別添3の「AIの判断に必要な最小限の範囲にデータを限定し、不要な属性情報の付与を避けること」はAI開発者向けです。どちらも、読者であるAI利用者への公式要求に置き換えてはいけません。利用企業にとっては、提供者・開発者へ制御可能範囲を確認する観点になります。

論点 自社で決めること 提供者・開発者へ確認すること 回答前の扱い
対象業務 何を開始条件・完了条件とするか 想定用途や提供範囲に含まれるか 対象を広げない
外部送信・更新・確定・削除 どの操作を許すか、どこで人が判断するか 操作単位で権限を制御できるか 高影響の操作を保留する
参照データ 業務上必要な情報と対象外の情報 参照範囲や不要な属性情報を制限できるか 未確認のデータを参照させない
例外・停止 どの条件で人へ戻し、誰が判断するか 停止、保留、再開をどの機能で実現できるか 人へ戻せない処理を進めない

分けた後は、各項目に「自社で決める人」または「質問する相手」を一つ置きます。提供元から回答が得られない事項は、自社の推測で確定せず、回答待ちのまま対象外にするか、影響を限定した条件へ戻します。

失敗:全社一斉に決めようとして対象範囲が膨らんだ

部署ごとに前提が食い違う場合は、全社共通の要件を先に完成させようとせず、一つの業務と一つの利用場面へ戻します。

全社や複数業務を一度に対象にすると、同じ「送信」でも送信先、内容、取り消しやすさが異なります。例外や承認条件も部署ごとに変わるため、共通語だけが増えて決定できなくなります。直す対象は機能一覧ではなく、対象業務の開始条件、完了条件、利用者、接続先、許す操作、対象外です。

【民間一次発信】ガートナージャパンが2026年5月21日に発表したプレスリリースは、特にセキュリティ・リスクの高い自律的・再帰的なエージェントについて、従業員が権限管理のプロセスに十分習熟するまで、個別にユースケースを特定し、全社一斉ではなく範囲を制限した展開が重要だという見解を示しています。確認日は2026年8月1日です。確認範囲は2026年5月21日公開のプレスリリース本文で、統計ではないため母数・組織規模は該当せず、有償レポートの内容、適用効果、全企業への一律適用は確認していません。これは公的な要求ではなく、民間調査会社による見解です。

この見解を自社へ当てはめるときも、「必ず一業務で始める」という公式ルールに変えてはいけません。会議が止まっている状況では、まず前提が共通する一つの業務へ戻すと、決められない理由を見つけやすくなります。別の部署や操作は削除するのではなく、「今回の対象外」として残し、現在の要件へ混ぜないことが改善になります。

失敗:作成者・所有者を決めないまま判断が止まった

作成者・所有者が未決なら、要件の変更、停止、再開を誰が決めるかを確定し、決定記録を更新できる状態へ戻します。

本記事では編集上の整理として、作成者を最初の設定や要件の起点を説明できる人、所有者を業務上の目的と変更を継続して引き受ける人として区別します。名称や役職は会社ごとに決められますが、退職・異動・組織変更があっても「誰に確認すれば現在の決定が分かるか」が失われないことが重要です。

前述のガートナージャパンのプレスリリースも、エージェントの作成者・所有者の明確化を挙げています。本記事で問題にするのは、不正や攻撃の原因ではなく、所有者がいないために要件を更新できず、停止や再開の判断が止まる状態です。

決め直す際は、エージェント名だけでなく、「対象業務の所有者」「要件記録の更新者」「影響が大きい操作を停止・再開する判断者」を記録します。一人が複数を担う場合も、役職名だけではなく、その人がどの判断を引き受けるかまで残します。これは一般的な役割分担を網羅するためではなく、今止まっている決定を再開するためです。

失敗:例外時の戻し先を決めず、曖昧なまま進めた

例外の戻し先がない場合は、入力不足、条件の競合、確認待ち、承認拒否ごとに、保留する地点と判断を返す相手を決め直します。

正常に完了する流れだけでは、要件を決める作業の不足を見つけにくくなります。入力が足りないのに補完してよいのか、複数条件が競合したときにどちらを優先するのか、提供元の回答がない状態で対象へ含めるのか、承認が拒否された後に修正して再申請するのかは、別々の決定です。

入力不足では、不足項目を示して依頼者へ戻すのか、処理全体を保留するのかを決めます。条件の競合では、AIエージェントに優先順位を推測させず、業務判断ができる人へ戻します。提供元への確認待ちは、自社内の未決事項と混ぜず、回答が得られるまで影響する操作を対象外にします。承認拒否では、拒否後に次の処理へ進まず、修正、終了、再確認のどれに戻すかを決めます。

すべての例外を先回りして網羅することが目的ではありません。現に作業を止めている例外と、重大な影響が生じ得る操作に関係する例外から、戻し先を確定します。新しい例外が見つかったときに記録へ追加できれば、曖昧なまま進める状態を減らせます。

改善:文書の体裁ではなく、後から確認できる決定記録へ直す

改善の完了条件は、特定様式の要件定義書を作ることではなく、決定内容と未決事項を後から容易に確認できることです。

AI事業者ガイドライン第1.2版の文書化に関する記述は、後から容易に確認できるよう適切なツールで記録が残されていればよく、紙媒体や特定の文書形式を必須としていません。したがって、表紙や章立てを整えるだけでは、判断が止まった原因は解消しません。表計算、チケット、文書管理ツールなど形式を問わず、現在の決定と根拠を追えることが必要です。

決定対象 決定内容 根拠・確認先 例外 未決事項 更新者
対象業務 開始条件、完了条件、対象外 業務手順と現場確認 条件外の依頼 別部署への展開 対象業務の所有者
許す操作 外部送信、更新、確定、削除の可否 業務上の影響と提供元回答 取り消せない操作 制御機能の回答待ち 操作範囲を変更できる人
人の判断 判断を置く条件と判断者 重大な影響の有無 不在、拒否、保留 代替判断者 承認条件を変更できる人
例外時の戻し先 保留地点と返却先 現行業務と確認結果 入力不足、条件競合 未確認の例外 例外処理を変更できる人
作成者・所有者 作成経緯と継続的な所有者 台帳と変更履歴 異動、退職、組織変更 引き継ぎ先 所有者情報を引き継ぐ人

この表も公的な標準様式ではありません。各行に「決定済み」「回答待ち」「対象外」を明示し、回答待ちを決定済みの文章へ埋め込まないことがポイントです。変更理由と確認先も残せば、後任者が結論だけでなく、なぜその範囲にしたかを確認できます。

再発防止:利用前のログ管理体制と利用中の定期確認を分けて残す

再発防止では、利用前に記録を管理できる体制を整え、利用中は適正な範囲・方法かを別の活動として定期的に確認します。

AI事業者ガイドライン第1.2版の別添5は、AI利用者が利用前に行う事項として、適正利用に必要な知識・技能の習得と、利用過程におけるログの管理体制の整備を挙げています。一方、利用中に行う事項として、AIの活用が適正な範囲・方法で行われているかの定期的な確認を挙げています。「ログを作れば定期確認も済む」と一続きにせず、準備と運用を分けて残します。

利用前の決定記録には、何を記録するか、誰が見られるか、どの変更と結び付けるかを残します。利用中の確認では、対象外の業務へ広がっていないか、承認条件が現状と合っているか、新しい例外の戻し先が決まっているかを確認します。不要なデータや冗長なログの削除も、同別添がAI利用者向けに示すデータ最小化の内容です。原因追跡に必要という理由だけで、不要な情報を際限なく残すことは避けます。

業務手順、接続先、提供条件、所有者、承認経路が変わったときは、定期確認を待たずに決定記録を更新します。そこで見つかった不足は担当者への注意だけで終わらせず、対象範囲、承認条件、例外の戻し先のどこへ反映したかを残します。決めた統制が実際に機能しなかった原因は「AIエージェントのセキュリティで失敗する原因と改善策」、リスクや対策の基礎は「AIエージェントのセキュリティとは?導入前に知るべき基礎と判断基準」が扱う範囲です。

よくある質問

AIエージェントの要件を決め直すときの疑問は、承認条件、判断主体、記録形式、セキュリティ記事との境界に分けると整理できます。

Q1. すべての出力に人の承認を入れるべきですか?

すべてを一律に承認する必要があるとは限りません。AI事業者ガイドライン第1.2版のAI利用者向け記述は、出力によって重大な影響または被害が生じ得る場合に、適宜、人間の判断を介在させるとしています。外部送信、更新、確定、削除などの操作ごとに影響と取り消しやすさを見て、自社の承認条件を決めてください。

Q2. 自社で決めることと提供元へ確認することはどう分けますか?

対象業務、許す操作、人の判断を置く条件、例外時の戻し先は自社で決めます。権限を操作単位で制御できるか、参照データの範囲を制限できるか、停止や保留を実現できるかは提供者・開発者へ確認します。回答がない事項は推測で確定せず、回答待ちまたは対象外として記録します。

Q3. 要件定義書は決まった様式で作る必要がありますか?

本記事が参照するAI事業者ガイドライン第1.2版は、紙媒体や特定形式を必須としていません。決定内容、根拠、確認先、例外、未決事項、更新者を後から容易に確認できることが重要です。文書、表計算、チケットなど、自社が更新を続けられる方法を選べます。

Q4. セキュリティ事故への対策もこの記事で扱いますか?

この記事は、要件を決めていなかった、または決め方を誤った状態の診断に限定しています。決めた統制が機能しなかった原因、事故、漏えい、攻撃手法、監査や実装の詳細は扱いません。関連テーマを探す場合は、AI関連記事一覧から現在の課題に合う記事を確認してください。

まとめ

AIエージェントの要件定義で失敗したときは、機能不足と決めつけず、承認条件、判断主体、対象範囲、作成者・所有者、例外の戻し先のどこで決定が止まったかを確認します。症状と原因は一対一ではないため、会議資料や決定記録から仮説を確かめることが必要です。

全件承認で形骸化したなら重大な影響が生じ得る条件へ戻し、自社の決定と提供元への質問が混ざったなら未決事項を分けます。全社一斉で範囲が膨らんだなら一つの業務へ戻し、所有者や例外の戻し先がなければ、その決定だけを補います。最後に、特定様式の完成ではなく、決定と未決事項を後から確認でき、変更時に更新できる状態を完了条件にしてください。

参考資料

本記事の事実確認に使用した、第1.2版の掲載ページ・別添と、民間一次発信のプレスリリースです。

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